ここはどこだろう。
光の届かない深海の底に、私は沈んでいる。
身体の上に幾重にも重なった水圧。
心臓がバクバク鳴るわけでもなく、ただ静かに、静かに、すべての感情が潰されていく。
朝が来たらしい。
部屋の隅のカーテンの隙間から、うっすらと光が差し込んでいる。
でも私には関係ない。
時間が動いても、自分の世界は止まったまま。
正確には、「止まり続けてしまっている」のかもしれない。
「起きなきゃ」と思う頭と、「無理だ」と囁く体が引き裂かれる。
重力が5倍になったような感覚。
筋肉が言うことをきかない。
意志が麻痺している。
そう、これは怠けではない。
ただ、本当に動けないのだ。
たとえば、骨がバラバラに崩れ落ちて、神経だけが残って痛みを感じているような、そんな感覚。
リビングの方から、家族の声が聞こえてくる。
妻が朝ご飯を用意している。
時計の針は容赦なく進み、今日という日が確実に始まっている。
世界は私を置き去りにして、ちゃんと回っている。
私だけが取り残されている。
そういう感覚が、もう何ヶ月も、何年も続いている。
心の中には、説明のつかない霧が立ち込めている。
昨日の記憶も、おとといの記憶も、なんだか霞がかった写真のようで、どこか現実感がない。何をしていたか思い出せない。
笑ったかどうか、泣いたかどうか、そもそも会話したかどうかすら曖昧だ。
スマホを手に取る。
通知はゼロ。
指は無意識にSNSを開くけど、流れてくるのは「がんばってる人たち」の言葉や写真。
自分とは無縁の世界。
ああ、世界は生きることを前提にして動いている。
私のように、ただ生きているだけで精一杯な人間のことなんて、誰も考えていない。
見ていない。
知らないままでいてくれる方が、むしろ救いかもしれない。
以前、私は「仕事人間」だった。
朝早く起きて、ネクタイを締めて、会社に行き、仕事をこなし、帰宅して家族と笑う。
そんな当たり前のことが、今は全部できない。
その“当たり前”が崩れ落ちた日、私の中の何かも一緒に壊れてしまった。
壊れた部品を元に戻そうと、何度も努力はした。
病院に行き、薬を飲み、カウンセリングを受け、運動や食事も整えようとした。
でも、そう簡単に直るものではなかった。
私の心は、どこかで深く傷ついていた。
見えない場所で、見えない何かが腐っていた。
家族の顔をまっすぐ見られない。
目を合わせると、「すまない」という気持ちが込み上げてきて、胸が苦しくなる。
何もできない自分がそこにいて、でも「できるふり」も「元気なふり」も、もうできない。
心は常に裸で、ただ晒されている。
夜になると、心がざわつく。
昼間の虚無とは違い、夜は「思考の嵐」が押し寄せてくる。
後悔、自責、焦り、不安、無価値感、全部が津波のように押し寄せてきて、眠れなくなる。
心の奥底にある「死にたい」という声が、囁きから叫び声に変わる時間。
でも私は死ねない。
子どもの寝顔を見てしまうからだ。
妻の背中を見てしまうからだ。
「この人たちを残して消えてはいけない」という気持ちが、最後の最後で、私を引き止めている。
だからこそ苦しい。
どこにも逃げ場がない。
「頑張れ」と言わないでほしい。
「きっと良くなる」とも言わないでほしい。
そんな言葉は、鋭利なナイフのように心に突き刺さる。
ただ、「生きていてくれてありがとう」と言われたとき、私は少しだけ泣きたくなった。
誰にも言えなかった涙が、ようやく流れてきた気がした。
私は今も、深海の底にいる。
光は見えないし、声も届かない。
孤独の中でじっとしている。
でも、海の底にもわずかに流れがあることを、私は最近知った。
小さな小さな水流が、どこかへ向かっている。
それが希望なのか、ただの幻かは分からない。
でも私は今日、この言葉を書いた。
心の底から、指を通して、この記録を残した。
それはたぶん、まだ「終わっていない」という証だ。
生きるということの、かすかな、ほんのかすかな灯火だ。
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医師にタンパク質を摂りなさいと言われたので。
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私の時にこれらを利用してたら、また違った人生だったかもしれない。
ひとりではどうにもならない時あるよね
私は大変だったんだ
