朝、目を覚ました。
いや、正確には「目が覚めてしまった」。
それが一日の始まりだ。
目を開けた瞬間、深いため息が漏れる。
まるで、今日もまた「終わらない一日」が始まってしまったことに絶望するかのように。
カーテンは閉じたままだ。
隙間から差し込む光が、刺すように目に痛い。
あの光は、元気な人間のためのものだ。
わたしには眩しすぎる。
腕を動かす。
重たい。
背中が湿っているような感覚。
夜中、夢を見た気がする。
何の夢だったかは思い出せない。
ただ、目が覚めた時に強烈な疲労だけが残っている。
夢の中でも、休まらない。
布団から出るのに一時間かかる。
トイレに行きたいのに、体がいうことを聞かない。
頭の中では「行け」「立て」「お前は人間として最低限のこともできないのか」という声がぐるぐる回っている。
自分の声だ。
うつ病になってから、自分が自分の敵になった。
こんな皮肉があるだろうか。
誰よりも自分が、自分を苦しめる。
優しいふりをして、淡々と「もう終わりにしよう」と囁いてくる。
トイレに行く。
顔を洗う。
鏡を見ると、そこにあるのは、何も感じていないような表情の自分。
目だけが疲れている。
眉毛は下がり、唇は開きかけて、何かを言いかけたまま固まっている。
リビングには家族がいる。
わたしは、そこにうまく混ざれない。
混ざる資格がない気がして、彼らの視界に入らないようにキッチンの隅に立つ。
コップに水を入れる音だけが、自分の存在を証明している。
「おはよう」と妻が言う。
返事をするのに、数秒の沈黙が必要だ。
喉が塞がれているような感覚。
声は出たが、聞き取れたかどうかもわからない。
テレビの音が遠くで鳴っている。
ニュースキャスターが元気な声で「今日も暑くなりそうですね!」と言う。
わたしはその明るさが怖い。
まるで異世界の言語のようだ。
あの温度には、もうついていけない。
心が冬のまま、何年も経ってしまった。
食欲はない。
薬だけ飲む。
胃の中に重りが沈んでいくような感覚。
何も食べていないのに、重い。
何かが溜まっている。
それはきっと、言葉にならない感情の沈殿物だ。
今日も予定はない。
いや、あるにはある。
病院の予約がある。
けれど、そこに行く意味がわからない日もある。
薬をもらうだけのために片道30分、暑い中を歩く。
それすら拷問のように思える。
誰かと会うことが怖い。
誰かと話すことが、もうできない気がする。
言葉を選ぶ余裕がない。
笑うタイミングがわからない。
共感も、反応も、全部が面倒くさくて、怖い。
それでいて、誰にも会えないと、寂しい。
苦しい。
誰かに気づいてほしい。
でも気づかれると、恥ずかしい。
この矛盾の渦に、わたしは今日も沈む。
夜になった。
部屋の灯りをつけるのを忘れて、いつの間にか暗闇の中にいた。
目が慣れて、闇が居心地よくなっていることに気づいて、少しぞっとする。
わたしはこの闇を受け入れ始めているのか?
この無音の中に、自分の棲家を見つけようとしているのか?
SNSを開くと、友人たちの写真。
旅行、食事、子どもの笑顔。
いいねの数。
コメントのやり取り。
すぐにアプリを閉じる。
もう無理だ。
あれを「自分とは無関係の世界」と思えるまでに、どれだけ時間がかかったか。
深夜、ベッドに戻る。
今日一日、何をしたか思い出す。
トイレ、薬、水、沈黙。
何もしなかった。
でも、それが精一杯だった。
何もできなかったけど、「今日を生き延びた」というだけで、ほんのわずかだけ、涙が出そうになる。
誰にも褒められないし、誰にも認められない。
それでも、自分の中では、今日がギリギリの戦いだった。
うつ病というのは、戦争だ。
銃も砲弾も出ない。
でも、毎日、自分自身と殺し合いをしている。
「終わらせたい」と「まだ続けよう」が、互いの首を絞め合っている。
誰にも見えない戦場で。
今日も、勝ったのか、引き分けだったのか、
それとも負けたのか、よくわからない。
ただ、心臓はまだ動いている。
呼吸もある。
そういう事実だけが、わたしを明日に繋いでいる。
もし、誰かがこの日記を読んだとしても、理解されるとは思っていない。
でも、ひとつだけ言えるとしたら――
「生きているだけで、もう充分なんだよ」
そう、誰かに、そして自分に言ってあげられる日が、いつか来てほしいと、願っている。
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良かったら読んでいただけたらと思います
少しでも生きる力をみいだせれば幸いです
https://note.com/reimi_tutu/n/nba0d2059f547
医師にタンパク質を摂りなさいと言われたので。
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私の時にこれらを利用してたら、また違った人生だったかもしれない。
ひとりではどうにもならない時あるよね
私は大変だったんだ
