
朝は「始まり」じゃない。
ただ、昨日の苦しみの続きが再生されるだけだ。
目を開けた瞬間、空気が重い。
肺に入るだけで疲れるような、見えない何かに押しつぶされる。
何も起きていないのに、すでに限界を超えている感覚がある。
体は借り物みたいだ。
動かそうとしても、自分の意思が届かない。
指一本動かすのに、心の奥底から力をかき集めないといけない。
時間は流れているはずなのに、進んでいる気がしない。
同じ場所で、同じ苦しみを何度もなぞっているだけ。
時計を見るたびに、「まだこんな時間か」と「もうこんな時間か」が同時に襲ってくる。
頭の中では、静かな責め苦が続いている。
怒鳴られているわけじゃない。
むしろ、ひどく冷たい声で、淡々と告げられる。
「価値がない」「意味がない」「必要とされていない」
その言葉が、ゆっくりと染み込んで離れない。
何かをしようとすると、すぐに霧がかかる。
考えがまとまらない。
さっきまで分かっていたことが、急に遠くへ消える。
自分という存在が、ぼやけていく。
外の音だけがやけにリアルだ。
車の音、人の話し声、遠くの生活の気配。
それが全部、「自分のいない世界」を突きつけてくる。
「普通」という言葉が、鋭い刃になる。
みんなが当たり前にできていることが、自分にはできない。
その差が、ゆっくりと心を削っていく。
夜になると、少しだけ世界が静かになる。
でも救われるわけじゃない。
ただ、痛みが鈍くなるだけで、消えることはない。
眠れたとしても、回復はしない。
ただ意識が途切れて、また同じ場所に戻されるだけ。
ここにはドラマもない。
劇的な絶望ですらない。
ただ、薄くて重い苦しみが、ずっと続いている。
終わりがないことだけが、はっきりしている。
それが一番、こたえる。