
恐怖の館 1
その館は、音を飲み込む。
扉を開けた瞬間、外の世界は切り離される。
風の音も、遠くの車の気配も、すべてが消え失せる。
ただ、自分の呼吸だけがやけに大きく響く。
廊下は長い。
どこまでも続いているように見えるのに、歩いても歩いても景色が変わらない。
壁には無数の扉。
けれど、どれも開けてはいけない気がする。
理由はわからない。
ただ、本能が拒絶する。
それでも、ひとつだけ、少しだけ開いている扉があった。
中を覗くと――
そこには「自分」がいた。
暗い部屋の中で、膝を抱えている。
何もせず、ただうつむいている。
その顔は見えない。
けれど、見なくてもわかる。
あれは、自分だ。
声をかけようとしても、声が出ない。
喉が締め付けられたように、音が消える。
その「自分」は、ゆっくりと顔を上げる。
目が合った瞬間、理解する。
ここは、逃げ場じゃない。
閉じ込められているのは、「外」じゃない。
閉じ込めているのは、自分自身だと。
扉を閉めようとしても、手が動かない。
視線が離れない。
もう一人の自分は、何も言わずに見つめ続ける。
責めるでもなく、助けるでもなく、
ただ、そこに「いる」だけで、すべてを突きつけてくる。
――逃げられない。
気づいた時には、背後の廊下も消えていた。
戻る道はない。
館の中には、無数の「自分」がいる。
泣いている自分。
壊れかけている自分。
何も感じなくなった自分。
どの扉を開けても、そこにいるのは同じだった。
そして最後に、気づく。
この館には出口がないのではない。
最初から、入った覚えすらないのだと。
気づけば、ずっとここにいた。
静まり返った空間の中で、
自分の呼吸だけが、やけに重く響く。
その音だけが、
まだ「生きている証」だった。
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とても優しく親切で感動ですよ
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小児がんと難病の子から元気をもらう
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