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KIZUNA  うつ病だけど もう少し 生きてみます。

障害2級 重度のうつ病日記 長男と家族の闘病余命宣告

うつ恐怖の館 4

うつ恐怖の館 4

 

扉は、音もなく閉まった。

――戻れない。

 

その事実だけが、静かに胸の奥に沈んでいく。
恐怖というより、もう慣れた絶望だった。

 

廊下は前よりも暗い。
いや、暗さが“濃く”なっている。
まるで空気そのものが重く、黒く、まとわりつくようだった。

 

足を一歩踏み出す。

床が軋む音が、自分の中で何倍にも響く。
その音にさえ、責められている気がする。

 

「また来たのか」

どこからか声がした。

 

振り返っても、誰もいない。
でも、その声は確かに“自分の中”から聞こえてくる。

「逃げられないのに」

その言葉は、事実だった。

 

進むしかない。
でも進んだ先には、救いなんてないと知っている。

 

壁に手をつく。
冷たいはずなのに、妙に生ぬるい。
まるで誰かの体温のようで、気持ち悪さに手を離した。

 

すると、壁に文字が浮かび上がる。

――「誰にも理解されない」

 

その文字は、ゆっくりと滲み、増えていく。

――「怠けているだけだろ」
――「甘えだ」
――「みんな頑張ってる」

 

見覚えのある言葉ばかりだった。

頭の中で何度も繰り返されてきた言葉。
外から言われたものも、自分で自分に突きつけたものも、全部ここにある。

 

逃げようとして目を閉じる。

でも、閉じた瞼の裏のほうが、もっとはっきり見える。

「消えたい」

思わず漏れたその言葉に、館が反応した。

 

ギシ…ギシ…

どこかの扉が開く音。

 

ゆっくり目を開けると、廊下の先に一つの部屋が現れていた。
さっきまでなかったはずの扉。

引き寄せられるように、足が動く。

 

止められない。

扉に手をかける。

――もし、この先に何もなかったら。

――もし、このまま消えられるなら。

 

そんな期待とも絶望ともつかない感情が、静かに広がる。

扉を開ける。

中は――

何もない。

真っ暗な空間。

ただ、ひとつだけ。

 

床に座り込んでいる“自分”がいた。

うずくまり、顔も上げず、微動だにしない。

近づく。

声をかける。

 

「大丈夫?」

返事はない。

でも、その“自分”が小さく呟いた。

「もう無理だ」

 

その声は、あまりにも静かで、あまりにも重かった。

助けようとして手を伸ばす。

けれど、その瞬間――

ズブッ

足元が沈んだ。

 

床じゃない。

それは底のない闇だった。

 

気づいたときには、体がゆっくりと沈んでいく。

“自分”は、顔も上げないまま言う。

「ようこそ」

その言葉には、感情がなかった。

 

ただの事実のように。

「ここが、一番深いところだよ」

胸が締めつけられる。

息が苦しい。

 

でも、もがく力も残っていない。

沈みながら、思う。

ああ、ここが――

本当の“底”なんだと。

 

光はない。
音もない。
助けも来ない。

 

ただ、自分だけがいる。

そして、その自分さえも、もう動かない。

完全な静止。

完全な孤独。

完全な絶望。

 

――それでも、終わらない。

沈みきったはずなのに、意識だけが残っている。

消えたいのに、消えられない。

ここが、この館の一番の恐怖だった。

 

「終われないこと」

暗闇の中で、誰かが笑った気がした。

 

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とても優しく親切で感動ですよ

 

 

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