
音が遠い。
テレビの音も、外の車の音も、どこか膜を一枚はさんだみたいにぼやけている。
世界が現実じゃないような、夢の中に取り残されたような感覚。
でも――苦しみだけは、やけに鮮明だ。
胸の奥に、名前のつかない圧迫感がある。
重いとか痛いとか、そういう単純なものじゃない。
ただ「おかしい」。
何かが決定的に壊れている、そんな感覚。
その違和感が、じわじわと恐怖に変わっていく。
理由は分からないのに、
「このままじゃ危ない」という信号だけが鳴り続ける。
逃げ場はない。
外に出ても同じ、部屋にいても同じ。
どこにも安全な場所がない。
自分の中に、閉じ込められている。
時間の流れもおかしい。
時計の針は進んでいるはずなのに、体感ではほとんど動いていない。
一秒一秒が引き延ばされて、永遠みたいに長くなる。
その長い時間を、ずっと「怖い」という感情だけで埋め尽くされる。
考えようとすると、思考がまとまらない。
言葉にならない断片だけが頭の中をぐるぐる回る。
「どうしよう」
「おかしい」
「怖い」
それだけが繰り返される。
自分で自分を落ち着かせようとしても、効かない。
深呼吸をしても、何も変わらない。
むしろ「落ち着かなきゃ」と思うほど、焦りが強くなる。
体もおかしい。
手が冷たい。
心臓が変なリズムで打つ。
自分の体なのに、うまくコントロールできない。
このまま壊れてしまうんじゃないか。
もう元に戻らないんじゃないか。
その考えが、恐怖にさらに火をつける。
誰かにこの状態を説明しようとしても、できない。
「怖い」としか言えない。
でも、その一言ではまったく足りない。
この恐怖は、もっと複雑で、もっと深い。
言葉の外側にあるものだ。
だから、理解されない。
伝わらない。
結局、一人で耐えるしかない。
気づくと、ただ座っているだけで何時間も過ぎている。
何もしていないのに、ぐったりと疲れている。
戦っているわけでもない。
でも、ずっと何かに追い詰められている。
終わりが見えない恐怖。
原因の分からない苦しみ。
出口のない閉じた世界。
その中で、ただ一つ願う。
せめて、少しだけ静かになってほしい。
この内側の嵐が、ほんの一瞬でもいいから止まってほしい。
そう思いながら、
今日もまた、自分の中の見えない恐怖と向き合い続けている。
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小児がんと難病の子から元気をもらう
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