
「また目が覚めたのか。もう朝だよ。」
静かな部屋に、自分の声が響く。
いや、違う。これは“あの声”だ。
もうひとりの、自分の中に棲みついた何か。
うつが育てた、冷たい影のような存在。
「昨日と何が違う?また何もできずに、ただ時間だけが過ぎる一日になるんだろ。」
布団から出る気力はない。
まぶたは重く、体は鉛のように沈んでいる。
なのに心だけが騒がしく、眠れない夜の残響が残っている。
「ねぇ、思い出してごらんよ。
あの日、何もかも投げ出したくなった時のことを。」
思い出したくなんてない。
でも“あの声”は容赦しない。
息をするだけで精一杯の時に、過去の後悔や未来の恐怖を次々と突きつけてくる。
「どうしてまだ生きてるの?君がいることで、誰かが喜ぶと本当に思ってるの?」
そんなわけない。
わかってるはずなのに、その感情が霧の奥に霞んで、掴めない。
愛情は記憶の彼方にあり、現実の私は、ただの抜け殻だ。
「君は邪魔なんだよ。
社会にとっても、家族にとっても、そして君自身にとっても。」
耳をふさぎたい。
でも、この声は外からじゃない。
心の奥底でささやく、私自身の影。
いくら叫んでも、消えない。
沈黙の中にある声だから。
「何をしてもダメだったじゃない。人間関係も壊れた。もう何も残ってないでしょ?」
そうだ。
気づけば誰とも連絡をとっていない。
携帯の通知は止まり、SNSも削除した。
私が消えたところで、世界は何も変わらない。
だから、消えてしまいたいと思うことに、罪悪感すら感じなくなってきた。
でも、ほんのわずかに、どこかで声がする。
「まだ生きてる。」
それは小さな声。
あの声よりずっとか細く、今にもかき消されそうな声。
でも、確かにいる。
「またその希望にすがるの?何度も裏切られてきたのに。」
たしかに、希望は何度も私を見放した。
良くなったと思った次の日に、また奈落に突き落とされた。
薬も効かない日がある。
カウンセリングでさえ、時に空虚に思える。
でも、それでも、「まだ生きてる」という事実だけは、否定できない。
「それのどこに意味があるの?」
わからない。
でも、意味があるかどうかなんて、本当は重要じゃないのかもしれない。
意味なんて、あとから作ればいい。
今はただ、今日をどうにかやり過ごすことだけを考えればいい。
「逃げてるだけだよ。
それで、何か変わるの?」
逃げたっていいじゃないか。
もう何年も、この地獄のような日々を生き抜いてきた。
戦って、倒れて、また立ち上がって、それでも壊れそうになりながら、ここにいる。
そうだ、私はまだ、ここにいる。
「……どうせまた明日も同じだ。」
そうかもしれない。
でも、“今日をやり過ごせた”という実績が、私の中にひとつだけ残る。
何もできなかったとしても、息をしていたという事実だけは、確かにそこにある。
小さな声が、少しだけ大きくなる。
「大丈夫じゃなくても、生きていていい。」
涙が出た。
何に対してか、わからない。
ただ、張り詰めた何かが一瞬だけ緩んで、涙がこぼれた。
その瞬間、“あの声”は少しだけ遠のいた。
そして私は、ゆっくりと目を閉じた。
今日は、ここまで生きた。
それで十分だ。
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医師にタンパク質を摂りなさいと言われたので。
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私の時にこれらを利用してたら、また違った人生だったかもしれない。
ひとりではどうにもならない時あるよね
私は大変だったんだ
